失業保険は、退職から再就職までの間に受け取れる手当です。
しかし、「出産を控えているため育児が落ち着いたら就職活動をしたい」「親の介護があるため今は働けない」など、すぐに求職活動や就業ができない状況の人もいるでしょう。
そうしたケースでは、受給期間を延長して、求職活動ができる状態になったら失業保険を受け取ることが可能です。
今回は、失業保険の延長について解説します。
受給期間を延長できる条件、申請方法、また解除の方法と注意事項に関して見ていきましょう。
目次
失業保険は延長できる?
受給するにあたって、期間の延長はできるのでしょうか。
受給期間や受給日数が延長可能かについて解説します。
失業保険の受給期間は延長が可能
条件を満たせば受給するまでの期間(時期)を延長できます。
受給期間は離職の翌日から1年以内ですが、病気や怪我などの理由で働けない状態であれば受給期間の延長が可能です。
ただし、受給日数の延長ではなく、受給できる期間を保留にするものです。
働けない状態の場合は失業保険の受給対象外となるため、働けるタイミングで失業保険を受け取れるよう、受給できる期間を延長できます。
受給できる日数自体は変わりませんが、就業や求職活動ができない状態のまま受給期間が過ぎてしまうといったことを防げる仕組みです。
失業保険の手続きに関しては、以下の記事をご参照ください。
失業保険の受給日数の延長はできる?
基本的に規定された日数しか受給できません。
ただし、以下のような延長給付条件を満たせば受給日数の延長も可能です。
- 訓練延長給付
公共職業訓練を受ける場合、受講の待期期間、受講期間、受講終了後の再就職活動期間中に延長が可能です。 - 個別延長給付
大規模災害の影響で失業した場合など、一定の条件を満たすケースで延長されます。 - 広域延長給付
失業者が多数発生した地域について、広域で職業の紹介を受けることが必要と認められると、90日を限度に延長される制度です。 - 全国延長給付
全国的に失業状態が悪化したとき、すべての受給者を対象に90日を限度として延長されます。 - 地域延長給付
就職が難しいと認定された地域に住んでいる失業者に対して、60日を上限に延長される仕組みです。
また、新型コロナウイルスの関係で離職した失業者に対しては、特例が適用されます。
条件を満たせば、受給日数が60日または30日まで延長可能です。
失業保険の受給期間延長の条件
具体的にどのようなケースで期間の延長が行われるのでしょうか。
対象者と期間について解説します。
延長可能となる対象者
離職後1年の間に、働けない期間が30日以上続いた場合、受給期間の延長が可能となります。
具体的には、以下のような働けない理由が必要です。
- 病気・けが
- 妊娠・出産・育児中(3歳未満)
- 親族などの看護・介護
- 海外ボランティアなど、その他やむを得ない理由
また、60歳~65歳で定年を迎えたあとにしばらく休養したいと考えている人は、受給期間の延長が可能です。
延長できる期間
最大3年間は受給期間を延長できます。
基本的な受給期間は、離職日の翌日から1年間です。
本来の受給期間1年に加えて3年間延長すると、受給期間を最長4年間に延ばすことが可能となります。
就業や求職活動ができない期間が長引いてしまった場合、働ける状態になったときの生活安定にむけて最長4年まで対応ができます。
失業保険の受給期間延長の申請方法
定められた期間内に申請書類を提出して届け出ることが必須です。
申請の期間や書類、手順についてチェックしましょう。
申請期間
定年退職後の場合は退職日の翌日から2ヵ月以内、それ以外は就業できなくなった日の翌日以降です。
やむを得ない理由で働けない場合、働けなくなった日の翌日以降から申請が可能です。
離職前から働けていなかったケースでは、離職した翌日から30日経過した日の翌日以降が申請期間の開始日となります。
申請期間は、延長後の受給期間の最終日まで可能ですが、できるだけ早期に申請しましょう。
申請が遅いと、所定日数のすべてを受給できないことがあります。
また、定年退職後の場合は、退職日の翌日から2ヵ月以内が申請の期限です。
ほかの対象者とは期間が異なるため、注意しましょう。
申請書類
受給延長の手続きには、以下の書類が必要となります。
- 受給期間延長申請書
- 延長の理由を証明する書類(医師の診断書など)
また、受給申請が済んでいる場合は雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知が、済んでいない場合は離職票-2を用意しなければなりません。
延長前の状況によって書類が異なるため、注意しましょう。
申請手順
必要書類と受給期間延長申請書を、管轄のハローワークに直接または郵送で提出します。
受給期間延長申請書は、ハローワークで受け取るか、郵送で受け取りが可能です。
郵送の場合は、ハローワークの「雇用保険給付・教育訓練給付窓口」へ電話し、郵送を依頼しましょう。
書類提出に関しても、本人が直接提出する以外に、郵送での提出や代理人が委任状を持参して手続きする方法もあります。
病気で入院中のため直接行けない、介護で忙しいためハローワークが空いている時間に行けないなどの場合は、郵送などを活用しましょう。
失業保険の受給期間延長の解除と注意点
失業保険の受給期間延長は、働ける状態になったら解除する必要があります。
解除にあたっては、管轄のハローワークで手続きを行いましょう。
ここからは、延長解除の申請書類と注意点に関して紹介します。
申請書類
解除申請には、以下の書類が必須となります。
- 受給期間延長通知書
- 延長が不要になったことを証明できる書類
また、受給手続きが済んでいる場合は雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知、済んでいない場合は通常の受給手続きで必要な書類を用意しましょう。
すでに受給していた場合はそれを証明する書類を提出しなければなりません。申請状況によって書類が異なるため、個々の状況にあわせて確認が必須となります。
解除申請から受給できるまでの期間
解除申請を申し込むと、7日間の待期期間が発生します。
申し込み日を含めて7日目が待期満了日です。
給付制限がない場合は、待期満了日の翌日から支給されます。
ただし、自己都合の場合は給付制限があるため、延長解除してから2ヵ月または3ヵ月後に受給できる仕組みです。
扶養に入れない可能性があるため注意
失業保険を受給すると、金額によっては扶養から外れる恐れがあります。
受給期間の延長中は働けない状態で収入がないため、扶養に入ることが可能です。
しかし、延長を解除して失業保険が入ると、社会保険扶養であれば給付金も年収に含まれ、失業保険の額によっては扶養対象外となる場合もあります。
ただし、失業保険の受給完了後に年収が130万円未満ならば再び被扶養者として認定されます。
扶養内にしておきたいのか、今後の就業も念頭に扶養に入れなくても問題ないのかも含めて、受給金額を確認しておきましょう。
求職活動できない期間がある場合は失業保険の受給期間延長が可能
失業保険は、働ける状態にありながら就職できていない人が、就職活動中に受給できるもので、理由があって働けない場合は、受給はできません。
働けない期間があり、就職活動ができない状態であれば、受給期間の延長申請が可能です。
延長には条件があるため、「出産を控えていて働けない」「60歳で定年したのでしばらく休んでからまた働きたい」など、自分の状況と延長の条件や申請方法を確認しましょう。