失業保険の受給資格の一つに特定理由離職者があり、これに該当する方は大きく2種類に分かれます。
受給資格が変わると、受給開始日や失業保険の申請に必要な書類も変わってきます。
退職後の生活に影響が出るため、自分がどの受給資格に分類されるのかを事前に正しく把握しておきましょう。
この記事では、特定理由離職者についてや失業保険の給付日数について解説しています。
最後まで読めば、退職後の受給の流れも把握できるでしょう。
退職後の生活や転職活動に集中するために、失業保険の受給に関する疑問を解決してください。
目次
失業保険の特定理由離職者と他の受給資格者との違いは?
失業保険を受給できる資格者は、退職理由により以下の3つに分けられます。
- 特定理由離職者
- 特定受給資格者
- 一般受給資格者
各資格者にはどのような人が該当するのかを解説していきます。
特定理由離職者
特定理由離職者は、大きく以下の2種類に分けられます。
- 雇用契約の満了後、更新がないことにより離職した者
- 自分ではどうしようもない正当な理由により自己都合退社した者
1の雇用契約の満了による離職には、派遣労働者が契約更新を希望したにも関わらず、派遣先の会社から契約更新をされずに退職することとなった方などが該当します。
ただし、労働契約書で契約更新が確約されていた場合を除き、「契約更新する可能性がある」とあいまいな表現をされていた場合が該当します。
2の正当な理由のある自己都合退社に含まれる退職パターンは、以下のとおりです。
(1) 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
(2) 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者
(3) 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者
(4) 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者
(5) 次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者
(a) 結婚に伴う住所の変更
(b) 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼
(c) 事業所の通勤困難な地への移転
(d) 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
(e) 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
(f) 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
(g) 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
(6) その他、上記「特定受給資格者の範囲」の2.の(11)に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した者等
出典:ハローワークインターネットサービス – 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要
上記に該当する方は特定理由離職者に分類され、別分類の離職者とは受給開始時期が異なります。
受給開始時期については、記事後半の「よくある質問」で解説しているのでご覧ください。
特定受給資格者
特定受給資格者とは、会社の倒産や会社都合で解雇になった方です。
会社都合の解雇の一例を以下に紹介します。
- 自分に非がなく解雇された方
- 雇用された際に提示された労働条件と実際の労働条件が明らかに異なるため退職した方
- 給料(退職手当を除く)の3分の1を超える部分が支給日までに支払われず退職した方
- 支払われていた給料が今までに比べ85%未満に低下したため退職した方(給料の低下を予想するのが難しかった場合に限る)
特定受給資格者は急な退職となるケースが多いため、失業保険の給付日数や受給開始時期が優遇されています。
一般受給資格者
一般受給資格者は、いわゆる自己都合で退社した方です。
特定理由離職者の自己都合退社との違いは、自分の意志で退社を決めたかどうかです。
一般受給資格者に分類される自己都合退社の理由の一例を、以下に紹介します。
- 結婚や出産を期に退職
- スキルアップで転職するため
- 大学や大学院に進学するため
- 実家の仕事を継ぐため
- 資格取得のための勉強時間確保
- 就業規則に反する行為での解雇
解雇は特定受給資格者に分類されるのではないかと思う方もいるかもしれませんが、就業規則に反した行為での解雇は労働者本人に非があるため、自己都合退社に該当します。
特定理由離職者と一般受給資格者のどちらにも出産での退職が含まれていますが、以下の違いがあります。
- 妊娠・出産を理由に退職し、退職後働けない状態の場合は特定理由離職者
- 妊娠出産を理由に退職し、時短勤務やパート・アルバイトで働ける場合は一般受給資格者
上記の違いがあるため、自分の状況がどちらに当てはまるのか確認しておきましょう。
失業保険の給付日数【特定理由離職者と他の受給資格で比較】
特定理由離職者の失業保険給付日数は、条件により特定受給資格者と同等のものと、一般受給資格者と同等のものに分けられます。
特定理由離職者と、特定受給資格者、一般受給資格者の失業保険給付日数を、下表でまとめて紹介します。
〇一部の特定理由離職者と特定受給資格者
被保険者期間 | |||||
1年未満 | 1~5年未満 | 5~10年未満 | 10~20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
30~35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35~45歳未満 | 150日 | 240日 | 270日 | ||
45~60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60~65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
上表の給付日数に該当する特定理由離職者は、契約更新を希望したにも関わらず更新されなかった派遣社員などです。
ただし、令和7年3月31日までに離職した方に限ります。
給付日数は被保険者であった期間と受給者の年齢によって変わり、最長330日受給可能です。
以下で紹介している支給日数に比べ長期間受給できるため、優遇されているのがわかります。
〇上記以外の特定理由離職者と一般受給資格者
被保険者期間 | ||||
1年未満 | 1~5年未満 | 5~10年未満 | 10~20年未満 | 20年以上 |
90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
特定理由離職者は離職直前の1年間で被保険者期間が半年以上あれば、受給資格者と認められるため、1年未満でも給付を受けられます。
特定受給資格者の給付日数と違い、年齢による給付日数の差はありません。
失業保険給付日数は最長でも150日で、特定受給資格者と比較すると短く設定されています。
特定理由離職者が受け取れる失業保険の金額
失業保険で受け取れるお金は基本手当日額と呼ばれ、以下の計算方法で求められます。
【退職した日より直前6ヵ月の給料の合計(賞与等は除く)÷180×45~80%】
計算式の最後の割合は給付率と呼ばれ、給与額が低い方ほど値が高くなり最大で80%です。
基本手当日額には上限があり、令和5年8月時点で以下のとおりです。
年齢 | 上限額 |
30歳未満 | 6,945円 |
30~45歳未満 | 7,715円 |
45~60歳未満 | 8,490円 |
60~65歳未満 | 7,294円 |
失業保険でもらえる金額について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
特定理由離職者の失業保険に関するよくある質問
特定理由離職者の失業保険に関するよくある質問を紹介します。
- 特定理由離職者の失業保険はいつからもらえる?
- 特定理由離職者が失業保険を受け取るための必要書類は?
- 特定理由離職者と一般受給資格者で失業保険をもらう条件に違いは?
順番に解説していきます。
特定理由離職者の失業保険はいつからもらえる?
失業保険が自分の口座に最初に振り込まれるのは、申請から約1ヵ月後です。
失業認定を受けるためには求職活動実績が必要なため、1ヵ月程度の時間が必要だからです。
一般受給資格者は給付制限期間が2ヵ月間あり、特定理由離職者よりも時間がかかります。ハローワークで手続きを行う待期期間が7日間あり、この期間中にアルバイトや再就職先が決まると「失業状態」ではないと判断されます。
失業保険が受け取れなくなるため気を付けましょう。
特定理由離職者が失業保険を受け取るための必要書類は?
特定理由離職者が失業保険を受け取るために、必要な書類と書類の入手方法を説明します。
離職理由を問わず必要となる書類は以下のとおりです。
- 雇用保険被保険者離職票
- 個人番号確認書類(以下の中から1点)
マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票記載事項証明書 - 身元確認書類(以下①のいずれか1種類もしくは②の中から異なる2種類(コピー不可))
①運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)など
②被保険者証、児童扶養手当証書など - 写真(直近のもの、正面上三分身、縦3.0cm×横2.4cm)2枚 ※支給申請時マイナンバーカードを使用すれば不要
- 預金通帳またはキャッシュカード
上記に加え、辞めた理由別に必要書類があり、内容は退職理由により異なります。
以下に退職理由別に必要な書類を紹介します。
正当な理由は記事の冒頭で紹介した項目の番号です。
退職理由 | 必要書類 |
契約更新されずに退職した | 労働契約書、雇入通知書、就業規則 |
正当な理由の(1) | 医師の診断書 |
正当な理由の(2) | 受給期間延長通知書 |
正当な理由の(3) | 扶養控除等申告書、健康保険証、医師の診断書 |
正当な理由の(4) | 転勤辞令、住民票の写し、扶養控除等申告書、健康保険証 |
正当な理由の(5) | (5)(a)~(5)(g)まで共通で離職者の通勤経路に関する時刻表 |
正当な理由の(5)(a) | 住民票の写し |
正当な理由の(5)(b) | 保育園の入園許可書 |
正当な理由の(5)(c) | 事業所移転の通知、事業所の移転先がわかる資料 |
正当な理由の(5)(d) | 住居の強制立ち退き、天災の事実を証明できる書類 |
正当な理由の(5)(e) | 鉄道、バスの他運輸機関の廃止や運行時間変更がわかる書類 |
正当な理由の(5)(f) | 転勤辞令、申立書、住民票の写し、扶養控除等申告書、健康保険証 |
正当な理由の(5)(g) | 転勤辞令、住民票の写し |
正当な理由の(6) | 担当窓口に問い合わせが必要 |
必要書類が多いので、退職理由をよく確認してチェックしましょう。
書類不備があると失業保険の受給が遅くなるので気を付けてください。
特定理由離職者と一般受給資格者で失業保険を受け取れる条件に違いは?
一般受給資格者と特定理由離職者の失業保険を受け取れる条件の違いは、以下のとおりです。
条件 | |
特定理由離職者 | 被保険者期間が退職直前の1年間で半年間以上の加入実績 |
一般受給資格者 | 被保険者期間が退職直前の2年間で1年以上の加入実績 |
一般受給資格者よりも特定理由離職者のほうが、失業保険をもらうための条件が緩和されています。
特定理由離職者は失業保険の受給資格の一つで退職理由の証明が必要
特定理由離職者は失業保険の受給資格の一つです。
特定理由離職者に該当する退職者は、雇用契約の更新を希望していたのに契約を打ち切られた方や正当な理由で退職した方です。
特定理由離職者と一般受給資格者を比べると、資格を得るための条件や受給開始までの期間が緩和されています。
ただし、特定理由離職者に分類されるためには、退職理由を証明するための書類を申請時までに準備する必要があります。
特定理由離職者に該当する可能性がある方は、必要書類を確認し、準備してからハローワークに行きましょう。