退職後に受け取れる失業保険は、仕事がない時期の生活の支えになります。
とはいえ、失業保険だけでは生活が成り立たず、アルバイトをしたいと考える方もいるでしょう。
ただし、何も考えずに失業保険の受給中にアルバイトをすると、受給資格がなくなり給付が止まってしまうかもしれません。
この記事では、失業保険の受給中にいくらまでならアルバイトができるのかや、受給中にアルバイトをするときの注意点を紹介しています。
最後まで読んでいただければ、失業保険の給付額を減らすことなくアルバイトができるでしょう。
これから失業保険の申請をする方や、現在受給中でアルバイトをしようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
失業保険を受給しながらのアルバイトはいくらまでOK?
失業保険を受け取りながらアルバイトをする場合、いくらまで稼いで良いかは人により異なります。
理由は失業手当を支給するかどうかを判断する基準に、退職前の1日当たりの賃金(以下、賃金日額)や失業保険の1日当たりの支給金額(以下、基本手当日額)が関係するからです。
賃金日額は退職直前の給料によって決まるため、失業保険をもらいながら稼げるアルバイトの金額も受給者により変動します。
アルバイトで稼いだ金額により、失業保険の支給の有無は以下の3パターンに分かれます。
- 全額支給
- 減額支給
- 不支給
次の項目で具体的例を紹介するので参考にしてください。
具体例のなかで出てくる控除額は今後変わる可能性がありますが、2023年12月時点の金額は以下のとおりです。
- 控除額:1,331円
支給の有無を求めるための計算式は、以下を使用します。
- 計算式
アルバイトの収入金額-控除額+基本手当日額=A
賃金日額×80%=B - AがBよりも低い場合は全額支給
- AがBよりも高い場合は差額を基本手当日額から減額して支給
- アルバイトの収入から控除額を引いた金額がBよりも高い場合は不支給
以下で順番に具体例を紹介していきます。
失業保険の手取りの計算方法はこちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
全額支給の具体例
まずは、失業手当が全額支給されるケースの例を見てみましょう。
賃金日額が13,000円、基本手当日額が6,500円、アルバイトで1日3,000円の収入を得た場合
- 計算式
A=3,000-1,331+6,500=8,169円
B=13,000×80%=10,400円
AがBよりも低いため、失業保険は全額支給されます。
具体例で得られる月額は以下のとおりです。
- 月額(4週間)
失業保険支給額:6,500×28日=182,000円
アルバイト代+失業保険:182,000+3,000=185,000円
減額支給の具体例
続いて、失業保険の支給額が減額されるケースの例を見てみましょう。
賃金日額が13,000円、基本手当日額が6,500円、アルバイトを3日間実施し合計18,000円の収入を得た場合
- 計算式
アルバイトを複数日行った場合は、1日当たりのアルバイトの収入を計算で求めます。
18,000÷3=6,000円
1日当たりのアルバイトの収入を計算式に当てはめます。
A=6,000-1,331+6,500=11,169円
B=13,000×80%=10,400円
AがBよりも高いため、基本手当日額を減額して支給されます。
減額される金額は以下のとおりです。
11,169-10,400円=769円
6,500-769=5,731円
失業保険が全額支給される場合と、アルバイトにより減額支給される場合の月の収入額を比較すると、以下のとおりです。
- 全額支給の場合の月額
6,500×28日=182,000円 - 減額支給の場合の月額
5,731×3日+6,500×25日=179,693円
アルバイト代+失業保険=18,000+179,693=197,693円
減額されますが、アルバイト代の8割以上の金額が全額支給された場合よりも多くなります。
不支給の具体例
最後に、アルバイトにより失業保険が不支給となるケースの例も見てみましょう。
賃金日額が13,000円、基本手当日額が6,500円、3日間アルバイトし合計36,000円の収入を得た場合
- 計算式
1日当たりのアルバイトの収入:(36,000÷3)-1,331=10,669円
B=13,000×80%=10,400円
アルバイトの収入がBよりも高いため、アルバイトを行った日数分の基本手当日額は支給されません。
失業保険が全額支給される場合と、アルバイトにより不支給となる場合の月の収入額を比較すると、以下のとおりです。
- 全額支給の場合の月額
6,500×28日=182,000円 - 不支給の場合の月額
失業保険の月額:6,500×(28日-3日)=162,500円
アルバイト代と失業保険:162,500+36,000=198,500円
不支給の場合と全額支給の場合を比べると、収入は月額で16,500円の差しかありません。36,000円分のアルバイトをしても実質的に収入アップするのはアルバイト代の半分以下です。
アルバイトで働きながら失業保険を受給するときの注意点
アルバイトで働きながら失業保険を受給するときの注意点を紹介します。
- 働く時間によっては失業保険が先送りされる
- ハローワークにアルバイトをする旨を報告する
- 失業保険の待期期間中にアルバイトを始めない
順番に説明します。
働く時間によっては失業保険が先送りされる
失業保険受給中のアルバイトは、1日4時間以上行った場合先送りされます。
失業保険は4週間ごとに支給されますが、1日に4時間以上働いた日の失業保険は支給されません。そのため、失業保険の支給総額が少なくなります。
ただし、所定給付日数が減るわけではないため、所定給付日数をフルで受給する場合、支給が先送りされただけで、支給総額が変わるわけではありません。
1日で賃金日額の80%以上を稼げそうなアルバイトをする場合、4時間以上働いて受給を先送りにするという方法もあります。
ただし、失業保険の受給期限は離職した日から原則最長1年です。
1年を超える先送りはできないので、注意しましょう。
ハローワークにアルバイトをする旨を報告する
失業保険をもらいながらアルバイトをした際は、ハローワークに報告してください。
きちんと報告せず、アルバイトをしていたことがばれると、不正受給と判断され厳しい罰則を科せられます。
不正受給した場合は「給付金の3倍返し」を求められることがあります。
給付金の3倍返しの内容は以下のとおりです。
- 今までの給付金の全額または一部の返還
- 不正受給した給付金の2倍
また、不正受給が発覚すれば、支給を受けた日または受けようとした日以後の失業保険は原則支払われません。
黙っていればばれないと思う人もいるでしょうが、アルバイト先での雇用保険加入や、知り合いからの密告でばれるケースがあります。
失業中に給付金の3倍返しは非常に厳しい罰則なので、失業保険の申請のときハローワークでアルバイトを行ったことを申告しましょう。
失業保険の待期期間中にアルバイトを始めない
失業保険をもらいながらアルバイトをしたい人は、待期期間が終わってから始めましょう。
待期期間は、失業給付の申請を行った日(求職の申込日)から7日間です。
待期期間にアルバイトをしてしまうと、失業状態を認められず待期期間が延長されてしまいます。
延長すると失業保険の受給開始日も遅くなるため、求職の申込日から7日間はアルバイトをせず待機しましょう。
雇用保険に加入しない程度の仕事量にとどめる
失業保険受給中にアルバイトで働く際は、雇用保険に加入しない程度の仕事量に調整してください。
アルバイト先の雇用保険に加入してしまうと、失業状態ではないと判断され、失業保険の給付が止まってしまうからです。
以下の条件を満たすと雇用保険に加入してしまうため、注意してください。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用期間が見込まれる場合
アルバイトの採用面接を受ける際は、雇用保険の加入条件を満たさない程度でのシフト調整をお願いしておきましょう。
失業保険受給中のアルバイトはいくらまでなら問題ないか把握しておこう
失業保険を受給中でも、アルバイトは可能です。
しかし、以下の点に気を付けて働かないと支給額が減額・不支給となったり、失業中とみなされず給付が止まる可能性があります。
- 1日4時間以上アルバイトすると失業保険は支給されない。1日4時間未満のアルバイトでも、アルバイト収入が一定金額よりも高いと減額や不支給になる
- 待期期間中にアルバイトを始めてしまうと、失業中とみなされず給付が始まらない
- アルバイト先の雇用保険に加入してしまうと就業中になるため、失業保険の給付が終了することがある
上記に注意しつつ、失業保険を受給しながらアルバイトを行って、生活資金を増やしましょう。