多様な働き方を選べるようになった昨今、パートタイムという雇用形態を選ぶ方もいるでしょう。
では、正社員とパートタイムの働き方には、どのような違いがあるのかご存じでしょうか。
本記事では、パートタイムの働き方の概要とメリット・デメリットを紹介します。
パートタイムはその働き方の利点から、主婦(夫)やシニア世代の方が多い傾向にあります。
今後パートタイムで働くことを検討している方は、自身の希望する働き方が実現できるのかチェックしてみましょう。
目次
パートタイムの働き方の特徴は?
パートタイムの働き方は、勤務日数・時間に関して正社員と比較すると少ないほか、給与形態や仕事内容、福利厚生、契約期間にも違いがあります。
パートタイムの働き方の特徴を見ていきましょう。
勤務日数・時間
パートタイム労働法において、パートタイムは「同じ事業所で働く通常の労働者(正社員)より一週間の所定労働時間が短い労働者」と定義されています。
参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 | e-Gov法令検索
厚生労働省の調査によれば、正社員の162.3時間と比較してパートタイムの月間労働時間は79.6時間と、約半分であることがわかりました。
月間勤務日数についても、正社員が19.4日であるのに対しパートタイムは13.8日で、5.6日少ないという結果です。
パートタイムは上限時間内で働き、一般的には残業もありません。
労働時間の上限は、雇用形態に関係なく「休憩時間を除いて1日8時間以内、週40時間以内」と労働基準法で定められています。
フルタイム勤務は正社員でもパートタイムでも可能であるため、フルタイムで働く労働者が必ずしも正社員を指すとは限らないでしょう。
パートタイムのなかには、正社員より責任範囲は狭いもののフルタイム勤務する「フルタイムパート」と呼ばれる方もいます。
給与形態
正社員の多くが月収制である一方で、パートタイムは時給制がほとんどです。
パートタイムは働いた時間分の給料が支給されるため、月のシフトに応じて給与も変動します。
パートタイムであっても正社員と同じ業務をこなしている場合、給与は同じ額でなければなりません。
2021年4月から施行された「パートタイム・有期雇用労働法」では、正社員とパートタイムの不合理な待遇差を禁止しています。
もしパートタイムで働いていて、正社員と同じ仕事をしているにも関わらず給与や待遇に差がある場合、企業にその理由を説明してもらいましょう。
その理由が非合理的なら、待遇の改善を求められます。
なお、これはアルバイトとして採用された方も同様です。
仕事内容
正社員とパートタイムに関して、仕事内容の違いを明確に定義した法律はありません。
しかし実際は、正社員と比較すると簡単な業務を任せられているケースが多いでしょう。
レジ打ちや品出し、データ入力など、一般的に会社のサポート業務がパートタイムの主な仕事として挙げられます。
正社員がパートタイマーに指示を出し、パートタイマーはその指示に従って働くという現場も少なくありません。
ただし、すべての職場においてパートタイマーがサポート業務を担うとは限らないため、働き始める前に仕事内容はしっかり確認しておきましょう。
福利厚生
福利厚生のなかでも有給休暇と社会保険は、条件を満たすことでパートタイム労働者にも与えられます。
有給休暇の日数は1週間の労働日数・時間によって変化するでしょう。
しかし、有給休暇自体は労働基準法で定められた条件を満たせば、すべての労働者に付与されます。
パートタイムの福利厚生について、詳しく見ていきましょう。
有給休暇
画像引用元:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
雇用形態に関係なく、有給休暇は取得条件さえ満たしていればパートタイムにも付与されます。
労働基準法第39条によると、有給休暇を取得できる条件は以下のとおりです。
- 6ヵ月以上勤務していること
- 全労働日の8割以上出勤すること
パートタイムの場合、労働時間が週30時間以上かつ週5日以上勤務している場合は、(1)の表のとおり有給休暇が付与されます。
労働時間が週4日以下かつ30時間未満の場合は、(2)の表を参考に自分の勤務条件に当てはまる部分を確認しましょう。
社会保険
パートタイム労働者も、以下の条件を満たせば社会保険の加入対象になります。
- 従業員数101人以上の企業で働いている(2024年度から従業員51人以上に拡大予定)
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2ヵ月を超えて雇用される見込み(フルタイム労働者と同様)
- 学生ではない
社会保険に加入すると、健康保険や厚生年金の手厚い保証を受けられます。
ただし毎月の給与から保険料が天引きされるため、手取り額が少なくなる点に注意しましょう。
契約期間
パートタイムは、一定の期間を定めて雇用契約を結ぶのが一般的です。
契約期間は企業によって異なり、数日間のみの契約もあれば1〜3ヵ月や半年、1年単位の契約を結ぶこともあります。
労働基準法において、期間の定めのないもの(無期雇用契約)を除いて3年を超える期間の雇用契約の締結は違法です。
また、有期雇用契約が5年を超えて更新されると、パートタイムを含む有期契約労働者からの申し込みによって無期雇用契約へ転換ができます。
例えば、1年ごとに更新する雇用契約の場合は5回目の更新をした年に、3年ごとに更新する契約の場合は1回目の更新後の3年間に無期雇用契約への転換申し込みが可能です。
参考:改正労働基準法により、平成16年1月1日から、労働契約の契約期間を3年以内とする
パートタイムで働くメリット・デメリット
パートタイマーは自分の好きな曜日・時間に働きやすく、ワークライフバランスをとりやすいのがメリットです。
一方で、正社員と比較すると収入や社会的信用度が低くなりやすい面があることを念頭に置いておきましょう。
パートタイムのメリットとデメリットを解説します。
パートタイムのメリット
パートタイムのメリットには、以下の3つが挙げられます。
- 自分の好きな曜日・時間に働きやすい
- 求人が多い
- Wワークがしやすい
以上のメリットを踏まえると、パートタイムは自分の時間を大切にした働き方ができるといえるでしょう。
自分の好きな曜日・時間に働きやすい
パートタイムの場合、働く曜日・時間をある程度自由に選べるのがメリットです。
例えば子どもが幼稚園に通っている場合、10〜14時までパートタイムで働き、14時以降には子どもを迎えに行くなど、融通を利かせやすいといえます。
スーパーやコンビニエンスストアなど、休日のない職場ではシフト制を導入している場合も珍しくありません。
シフト制は曜日が固定されない変動制のシフトであっても、希望を出せば自分が働きたい日に働けるでしょう。
先述したとおり、パートタイムで働く場合は残業がないのが一般的です。
時間内に業務が終わらなかったとしても、フルタイム勤務の正社員が業務を引き継いでくれることが多いでしょう。
求人が多い
パートタイムは正社員と比較すると求人が多く、採用されやすい点も魅力的です。
全国求人情報協会の調査によると、2023年10月時点の求人広告掲載件数は正社員の207,613件に対して、パート・アルバイトは856,905件と、正社員の約3.8倍ありました。
また、パートタイムの求人はオフィスワークから肉体労働まで、仕事の種類が豊富です。
雇用期間に関しても長期に限らず、短期や単発での募集もあるため、自分が求める条件に合った仕事を選べるでしょう。
Wワークがしやすい
パートタイム労働者は、正社員よりWワークを認められているケースが多くあります。
曜日や時間を調整してパートタイムを2つ以上かけ持ちすれば、収入が増えるうえに空いた時間の有効活用が可能です。
ただし、企業によっては同時期に同業他社で働くことを禁止したり、許可制にしたりしている場合もあります。
Wワークを考えている方は、面接の段階で採用担当者に確認しておくと安心です。
パートタイムのデメリット
パートタイムのデメリットには、以下の2つがあります。
- 収入が安定しない
- 社会的信用度が低い
それぞれ詳しく見てみましょう。
収入が安定しない
パートタイムは正社員と比較すると、収入が安定しにくいのがデメリットといえます。
先述したとおり、パートタイムは基本的に時給制であるため、毎月決まった収入が支給されるとは限りません。
その他にも、パートタイムには賞与がなかったり、昇給のチャンスも少なかったりと、大幅な収入アップが見込めない可能性があります。
また、福利厚生や各種手当のなかにはパートタイム対象外のものもあるでしょう。
さらに退職金制度がある企業であっても、パートタイムが退職金を支給されるケースは少ないかもしれません。
収入に安定性を求めるのであれば、シフトを増やすほかWワークを始めるのも一つの手です。
社会的信用度が低い
パートタイム労働者は、正社員と比較すると社会的信用度が低くなってしまいます。
パートタイムは有期雇用契約を結んで働くため、収入が長期的に安定しているとはいいにくいことがその理由です。
カードやローンなどの借入審査に落ちやすいと感じることもあるでしょう。
正社員と比べると、パートタイムは収入額が変動しがちで長期的な雇用を確約されていないため「返済能力がない」とみなされるかもしれません。
将来、住宅や車のローンを組もうと考えている方は、パートタイムだと審査に通りにくくなることを覚えておく必要があります。
パートタイムは待遇も改善しつつある生活スタイル
パートタイムは正社員と比較すると勤務日数・時間の他にも、給与形態や福利厚生などさまざまな点で違いがあります。
自分の好きな曜日・時間に働きやすい一方で、収入が安定しにくく、社会的信用度が低いというデメリットも懸念されてきました。
しかし、パートタイム・有期雇用労働法の施行により、正社員と同じ業務を行っている場合はパートタイムであっても正社員と同じ待遇となるよう法律で定められています。
ライフワークバランスを重視したい、決まった曜日だけ出勤したいという方にとっては、利点の多い働き方といえるかもしれません。